それらしくなく、それっぽく

映画やドラマのネタバレがいっぱいある。誤字脱字もいっぱいある。

「荒野のガンマン」

 監督:サム・ペキンパー

 1961年

 

 この没個性的な題名からもお分かり頂けるだろう。よくある西部劇である。ダンスホールで働く女に銀行強盗、何か過去を持つ主人公。

 サム・ペキンパーといえば、かのワイルドバンチはこの8年後に公開される。そんな彼の作品、この時点でボディスナッチャーという非常によくできた映画の脚本に関わっており、良い作品を作る器量があったはずである。しかし、これはそんな名作ではなく、ただありふれた西部劇のうちの1つという程度にしか感じることができなかった。

 しかし、確かにどこか、普通と違うような香りはするのである。村人から陰口を叩かれ、仕方なくダンスホールで働く、信心深く真面目な女性が、主人公によって殺された息子の埋葬に向かう中、アパッチ族の弓兵を殺害してしまう。それまで受難の人生を歩み、そしてまた息子を殺害されるという大きな不幸が訪れた中、彼女はその身を汚すこととなる。主人公とくっつくための壁である息子の死、それを乗り越えるためのイベントとして「私も仕方なく人を殺してしまったから彼の気持ちがわかり、息子の死も許せるようになった」ということだろうか。しかし私には、それ以上の何かがあるようにも感じられた。

 そして、貨幣や金貨が舞う中、ボロボロになる狂った老人の哀れさからは、南北戦争、さらには戦争そのものの影を匂わせる。ヒロインを強姦をしようとする色男や突然現れるアパッチ族、主人公を執拗に追跡する弓兵。何か、まとまりのない荒野の人間たちが、その人間性を露呈しているような、粗野で残酷な世界がうかがえる。

 こうした何処か違う空気を漂わせながら、この作品はいかにもな西部劇を進めてゆく。そして最後には、何かがおかしいような、そんな気持ちがぼんやりと残る。